最前線からのインバウンド新常識!
“観光戦国時代で勝つ”
株式会社ノットワールド 河野有

第12回 未来の旅行を考える (最終回)

〜内容〜

[1] 全体を大まかに振り返る

もう一度、観光業にすごく大事な3要素について見ていきましょう。
コンテンツ、ガイド(デリバリー)、プロモーションでしたね。

  • コンテンツ
    コンテンツの作り方については、第4、5回で書きましたが、昨今のインバウンドへの過剰な期待を見ていて、こう思います。
    『インバウンドもいいのだけど、日本人に対しての観光の付加価値も見直していく事が、インバウンドに繋がっていく』と。
    最近、外国人観光客がたくさん来ているから、外国人に魅力を"発見"してもらって、外国人観光客であふれる街づくりをしよう!という青写真を描く方がたくさんいらっしゃいます。
    そこまで甘くないだろう、と私は思います。
    もちろん成功している場所はたくさんあります。長野県のスノーモンキーや山形のキツネ村などもそうでしょう。
    ただ、それはごく一部です。一般的に見て、外国人を呼んでくるのは、日本人を呼ぶよりも難しい事だと思います。(直行便就航などのウルトラCを除きます)

    もう一度、第10回で書いてきたような旅行の醍醐味の話を思い出してみましょう。『現地の人たちに人気なところに足を運び、人と話し、生活に触れる体験』が旅行だと書いてきました。上記の定義に沿って考えると、ゲストが外国人しかいない状態は、あまり健全ではない、と思います。
    日本人がいないと(日本人にも人気の場所でないと)、外国人にも魅力的ではないからです。
    外国人のみを対象にし、外国人のみに合わせた街づくりをしていく事は、方向性を間違えると非常に危険です。ともすると、ニセモノ、になりかねない。(ゲストは本物、を求めています)
    観光は平和産業ですので、もし万が一国同士の揉め事などが起こってしまうと、どちらかに偏る事は、若干リスクになるとも言えます。
    その土地だけにしかない価値は、絶対に見つけられるはずです。それは物だけではなく、人、自然、文化、食など多岐にわたります。インバウンド、という事にとらわれすぎず、魅力を開発していく事が大事ですね。
  • ガイド
    観光は平和産業と常に書いてきました。特にガイドはその大きな部分を占めます。
    様々なテクノロジーで、ガイドは不要になると思われがちですが、より重要になるのではないでしょうか。人と人とのコミュニケーション部分は、確実に残ります。
    ガイドは、自分たちの価値、をしっかり理解し、ゲストに価値を提供し続けることで、もっともっと素晴らしい職業になっていくでしょう。人の触れ合いは、相互理解を生みます。違う事よりも、同じことに気づいていく事で、より世界を平和にすることに近づいていくわけですね。
    ガイドさんは、ゲストに対する日本の観光大使です。誇りと責任感を持って、コミュニケーションを磨き続けていただきたいと思います。
    そして、一緒に日本のガイド水準を世界一に上げていきましょう。
  • プロモーション
    今の時代、口コミはとても大事ですね。でも、人が知らないところに行ってみたい、と思う人もどんどん増え、ゲストの要望は多様化してきています。
    プロモーションを考える際には、ゲストの気持ちに寄り添う事がとにかく大事です。自分がゲストだったら、という問いを繰り返し、改善を繰り返していきましょう。
    そのためにも、『自分がゲストになること』を忘れないでいないといけません。国内でも国外でもいいので、定期的に旅行をし、自分がゲストの気持ちを知る事、他の土地でやっている事を知る事、そしてリラックスしてリフレッシュする気持ちよさを、また仕事にフィードバックしていく事、ですね。

    とある研究では、旅行をする人の方が、旅行をしない人よりも生産性が高い、というものもあるそうです。旅行は人生に必要な要素だと思います。

[2] 今から始められること

上記のコンテンツ、ガイド、プロモーションを磨いていくのは言うまでもないのですが、個人として考えていきたい事は以下3点です。

  • しっかりとした暮らしをする
  • 自分の付加価値を考える
  • 個人が観光立国への意識を持つ

1つ目から行きます。
観光とは、現地の暮らしに触れる事、だとすると、日本人らしい暮らしがないのに魅力はない。魅力を磨く、とよく言いますが、それは、毎日をしっかり暮らす、という事かもしれません。
例えば、小さい話ですが、安い大量消費品を買うのではなく、少し高くても長期間持つ、少し質のいいものを買うとか、日々の暮らしを充実させていく事が、外国人を惹きつける一つになるのではないかと思います。
観光は人、世の中を元気な人でいっぱいにしていきたいものですね。

2つ目は、自分の付加価値を考える事、です。
人間は往々にして短期的な視点ばかりになります。役所の予算もだいたいが単年です。例えば寺を壊して、代わりにビルを建てたら〇億円儲かる、という経済原理が全てに優先される事が多いです。
短期的視点だけだと、観光としてはもったいないので、長期的に街づくりすることを考えてほしいと思います。街の価値は、すぐに出来るものではありません。長い間で培っていくものですね。
自分たちの町や国の、観光客にとっての価値は何なのか、しっかり自問自答をして街づくりをしていく必要があります。

3つ目は、個人が観光立国への意識を持つこと、です。目指さないと、なれません。
みんなが意識することで、何気ない日常でも、観光客がWelcomeされていることを感じる、というのは素晴らしい事ですし、今の日本はそういったことがだいぶ支持されていると思います。(実際によくゲストから聞きます)
観光への思いを持つことで、街づくりの側面も変わってきますね。
光を観る、と書いて観光。光をもっともっと見せていきたいものです。

[3] 人生とは?

本当に最後の章になりました。
『人生とは何だろう』、という自問自答をしてみたいと思います。
禅問答みたいですが、私は、『人生とは、人類への恩返し』だと思っています。
自分たちの先人たちが切り開いてきてくれたことに感謝して、未来の人類のためによりよい世界を築く事こそが、人生の意味ではないでしょうか。
私は、地球に人類に生まれてよかったですし、日本に生まれてきて本当に良かったと思っています。
そして、日本をこのような国にして、守ってきてくれた先人達に大変感謝しております。

そんな日本。
国際観光という面では、まだスタートしたばかりでしょう。
2019年はラグビーワールドカップが大成功のうちに終わりました。
2020年にはオリンピックもあり、世界中の注目が日本に集まっています。

とにかく今が勝負です。ワクワクするではないですか。
人生は一度きり。
先の見えない未来でも、是非みんなで切磋琢磨しながら、ワクワクしながら、新しい観光を作っていきましょう。

一年間ありがとうございました。
是非皆さまとアツく未来について語る日が来ることを祈っております。

以上

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・執筆者:河野 有、ノットワールドについてはこちら