セミナー・イベント Seminar

[2018.10.2] J-TLACインバウンドセミナー

【講演】
観光振興や訪日外国人誘致のために今考えるべきこと、できることについて、近畿大学教授の高橋一夫氏より「観光地経営のイノベーション 〜DMOのマーケティングを中心に〜」と題して、さらに株式会社ルート・アンド・パートナーズ代表取締役の増渕達也氏より、「永遠の日米豪富裕層訪日客を創る 〜考え方・事例・準備〜」 をテーマにお話を伺いました。

 

 

(プロフィール)
高橋一夫氏(近畿大学経営学部教授)
1983年JTB入社。イベント・コンベンション営業部長、コミュニケーション事業部長。在職中は2001年東アジア競技大会招致概要計画書の策定、2002年ライオンズクラブ国際大会大阪大会、及び2004年ロータリークラブ国際大会大阪大会の招致事業に従事。2006年JTBを退社後、流通科学大学サービス産業学部教授、2012年より現職。
「ワールドマスターズゲームズ2021関西」の誘致を先導し、現在、評議員を務める。著者に「DMO〜観光地経営のイノベーション〜」(2017年度日本観光研究学会賞受賞)、「CSV観光ビジネス 〜地域とともに価値を創る〜」(2015年度日本観光研究学会賞受賞)など。

【講演のテーマ】
「観光地経営のイノベーション 〜DMOのマーケティングを中心に〜」 高橋 一夫氏

【概略】
組織を見直し、成果を生む体質への改善が望まれる。

インバウンド振興の目的は、ただ単に旅行客数を増やすことではなく、いかに消費を拡大させるかと共に、観光の中での産業変換をつくり上げていくことにあり、その前提に立ってDMOや地域がどのように効果的・効率的にマーケティングを展開していくかが重要です。
「まち・ひと・しごと創生総合戦略」で登場したDMOですが、従来の観光協会とDMOの違いを海外との比較から見れば、それはデスティネーション・マーケティングなどの成果の違いであり、その違いは組織マネジメントによって生み出されるということです。
日本のDMOや観光協会では、出向者の人事評価は出向元が下すのが常であり、それによって複数の上司から命令を受けるのと同じ結果をもたらします。一緒に働いている人ではなく、常日頃の努力や活躍を知らない出向元が評価します。結果、まっとうな評価が得られない場合は、同期と比べて昇格が遅れたり、ボーナスにも影響が及ぶこともあるでしょう。自らの所属意識の希薄化さえ招きかねない状況下で、成果を出せと言うのは酷な話ではないでしょうか。
組織マネジメントを見直し、成果を出す組織へと体質改善していく必要がありますが、まずは行政とDMOとのしっかりとした役割分担から始めるべきでしょう。行政は政策のプロとして、DMOはマーケティングのプロとしての役割を全うすることが求められます。
このような「人の問題」「行政との役割分担」の他にも、財源の問題や緊張感のあるステークホルダーとの関係、意思決定機関の存在感など、さまざまな課題の解決が急がれます。

知恵を出し、お金を投資することで、資源は観光対象化される。

DMOのマーケティングを考える上で、マーケティングとは、人間や社会のニーズを見きわめ、それに応えることで、その結果として利益を得ることだと整理したいと思います。
多くの外国人旅行客を呼ぶことが全てではなく、外国人が落とすお金によって地域の経済が回っていくよう、季節性などの観光のマーケティング特性を踏まえたデスティネーション・マーケティングの戦略を行っていくことが必要です。
そのためにはまず、観光資源の魅力化への投資が大切です。そのために地域の人が知恵を出し、投資もすることにより、観光資源が観光対象化されるのです。対象化のためには、設定したターゲットをモニタリングし、ターゲットとのコミュニケーションをおこない、それをマーケティング組織としてのDMOが実行するのです。
昨今注目のデジタルマーケティングとは、このターゲティングのためのデータ化と、プロモーションにより効果的・効率的に取り組むための新たな手段と考えられます。
例えば“福島への旅行者は50歳代の夫婦”という仮説は、デモグラフィックな分析しかおこなわれていませんが、一次交通をもとにターゲットエリアやどのような価値観をもった人たちが、福島のどのような資源に関心をしめすのかを見極めていくことで、プロモーションが具体化します。つまり、お金のかけ方が明確になります。このような多方面にわたるデータ分析が、DMOには求められているのです。
外国人旅行客は今、ガイドブックや個人のブログ、SNS上の口コミやTV番組など、多様なメディアからの情報を収集していますが、従来からのコミュニケーション手法に頼り切ることなく、何が効果的であり効率的なのかを考えることが求められます。その際には、デジタルマーケティングも視野にいれるべきでしょう。限りあるお金の有効な使い方に関して今、DMO担当者のプロの意識が求められています。

観光地経営を担う高い専門性を有したDMOへ。

DMOは地方自治体と民間事業者による観光ビジネスの共同体です。観光地経営を担うための機能と高い専門性を有して、観光行政との役割分担によって、権限と責任を明確にしたプロフェッショナルな組織として運営していかないと、今までの観光協会と違うものにはならないのではないでしょうか。


(プロフィール)
増渕達也氏(株式会社ルート・アンド・パートナーズ代表取締役)
1992年東京大学卒業後株式会社電通入社、2002年富裕層向け雑誌の草分けであるセブンシーズを発行する株式会社セブンシーズ・アンド・カンパニー代表取締役に就任。2006年富裕層向けライフスタイルマネジメントサービスを手掛ける株式会社ルート・アンド・パートナーズを設立、現在に至る。2013年にはシンガポールに進出。日本、アジアを中心に富裕層ビジネスを手掛け、富裕層マーケティングに関する造詣が深い。HighNetWorth Magazine編集長、富裕層マーケティング研究会主宰。Advertising Week Asia 2016〜18アドバイザリーカウンシル、東京都/東京観光財団富裕層インバウンド戦略アドバイザー、JNTO富裕層インバウンドカタログアドバイザー。

 

【講演のテーマ】
「永遠の日米豪富裕層訪日客を創る 〜考え方・事例・準備〜」 増渕 達也氏

【概略】
ライフスタイルマネジメントで富裕層を取り込む。

世界のお金持がどのように分布しているかと言えば、純資産1億円以上の人がロンドンに約35万7,000人住んでおり、フランクフルトには12万8,000人位、ブリュッセルには3万5,000人弱のミリオネアが住んでいるようです。
アメリカのニューヨークシティには34万人位、サンフランシスコにおよそ18万人、ロスアンゼルスには17万人程度います。
次に純資産50ミリオン以上、日本円に換算して約66億円以上の人は、北米に約4万4,000人が存在していて、日本にも約1万人います。
日本の富裕層の傾向は、震災前には国内のショートトリップ、例えば東京在住者であれば西伊豆に3日間とかが主流でしたが、震災以降はロングバカンスが多くなりました。それどころかデュアルライフ、つまり東京に半分、シンガポールに半分のような二重生活者が増えました。
日本の富裕層の旅行傾向は、震災前は国内のショートトリップ、例えば東京在住者であれば西伊豆に3日間とかが主流でしたが、震災以降はロングバカンスが多くなりました。それどころかデュアルライフ、つまり東京に半分、シンガポールに半分のような二重生活者が増えました。
欧米はいわゆるロングバカンスが主流。いわゆる“旅が人生”と言う人が多く、彼らをサポートする「ライフスタイルマネジメント」というビジネスがきちんと根付いています。
表向きは旅行代理店ですが、実際にはクライアントのご子息の学校を見つけたり、相続あるいは事業承継の相談にも応えるプロフェッショナル集団で、消費や投資に結びつくようなものから、旅行商売までなんでも引き受けます。
日本にはまだ数少ない業態ですが、インバウンドやアウトバウンドの活況で、今後着実に増えていくと予想されます。

ユダヤ人マーケットを攻略する。

世界の富裕層トラベラーを日本に招く方法を考える上で、杉原千畝(すぎはら ちうね)さんという人にフォーカスして考えてみます。杉原さんは、第二次大戦中にナチス・ドイツの迫害によりポーランド等から逃れてきた難民たちの窮状に同情し、大量のビザを発給し、およそ6,000(大半がユダヤ人系)にのぼる避難民を救った人です。
東洋のシンドラーとまで言われた杉原さんの記念館が、岐阜県八百津町にあります。ユダヤ人観光客にとってここは「東洋の聖地」。年間に少なくとも6,000人以上の観光客が訪れます。
ここを起点に、杉原さんが通った愛知県名古屋の瑞陵高校近くある記念碑まで、彼らは足を伸ばします。両県にとっては、明らかにインバウンド観光資源です。
弊社では現在、杉原ビザで助かった6,000人のご子孫、約25万人の1割の方に訪日旅行をしていただくための企画を進行中ですが、企画の骨子は「場所+ソフト」のコンテンツ。現在の杉原ファミリーとのスペシャルディナー会や、杉原千畝さんの名前を冠にしたノーベル平和賞のようなものの創設などを思案中です。

先達が培った地域の資産を、地域の強みに変換する試みを。

富裕層のインバウンド事業推進のためには、グローバル上のオープン情報の収集や、世界で流通するキーワードに常に敏感でいることです。例えば、ILTM(世界の富裕層旅行業界において最も権威のあるBtoB商談イベントのひとつ)やバーチュオーソ(南北アメリカ、オーストラリアなど22カ国、6,000人のトラベル・コンサルタントの流通網。大手エアライン、ホテルのほか、大手ツアーオペレター、クルーズ会社など300社以上が加盟)、さらにTraveler Made(世界的なツーリズムコンソーシアム)など。
その上で地域の観光資源化を考えれば、さまざまな可能性が見えてきます。例えば戦前の日光は大使館外交の要所でしたから、日光DMOでダボス会議を招致してしみてはどうでしょう。
日光とダボス会議。普通にある因子を掛け算すれば、それまで誰も気がつかなかった特別な答えが出てきます。先達の日本人が培ってくれた資産を、新しい地域の強みに変換する掛け算は、とても刺激的で楽しく、やりがいのある試みなのです。

 

 

 

 

会員企業のプレゼンテーションの模様

 

 


  • バイドゥ株式会社

    中国で6億人超にアプローチ可能なWEBマーケティング!

    中国最大級の1700万パネルを活用したアンケートサービスなど、中国WEBマーケティングならバイドゥ!


  • popIn株式会社

    アジア最大級のネイティブアド

    日本、台湾、韓国3カ国1000サイト超の優良メディアに配信可能!


  • 株式会社ワイヤ・アンド・ワイヤレス

    公衆Wi-Fiに特化した通信事業者

    日本最大級20万ヶ所以上のWi-Fiアクセスポイントを保有・運営中!


  • C Channel株式会社

    アジア最大規模の女性向け動画メディア

    女性の関心が高いテーマを中心に、短い時間で手軽に視聴できる動画を、日本と世界に向けて発信!


  • フォン・ジャパン株式会社

    会員数約3億人!世界で認知されているWi-Fiサービス

    世界に2,100万ヶ所以上ものWiFiスポットを持つ世界最大規模のWiFi通信会社!


  • 株式会社D2C

    ワンストップでインバウンドマーケティングを提供

    世界初のモバイル広告・マーケティング専門会社として、東南アジア各国にある拠点と連携しながらご提案!


  • 株式会社Gushcloud Japan

    インフルエンサー・マーケティング支援

    15,000人以上のインフルエンサー合計5億人のフォロワーを抱え、9か国で展開する、アジア最大級のインフルエンサー・マーケティング!


  • 株式会社電通マクロミルインサイト

    訪日インバウンド向けリサーチ

    多様化している訪日外国人の実態や、インサイトを把握するための豊富なリサーチを実施!